保湿剤の種類と使い分け ヒルドイドを中心に
2022/01/14
乾燥肌の背景
健康な皮膚では角質のバリア機能によって、水分の蒸発や外からの刺激を防ぐことが出来ます。
ライフスタイルの影響や年齢などによって発汗や皮脂分泌などの皮膚生理機能が変化したり、あるいは疾患により、水分を保つ働きやバリア機能が低下すると皮膚が乾燥しやすくなります。
皮膚の乾燥した状態を「皮脂欠乏症」と言います。
皮脂欠乏症は皮膚搔痒症や皮脂欠乏性湿疹につながるため、保湿薬によるケアは重要になります。
乳児は皮膚バリアと発汗機能が未熟なため、皮膚が乾燥しやすくなります。生後4か月頃からは皮発汗機能をもつ汗腺、皮脂を出す皮腺が増えることでバリア機能が出来てきます。
また、高齢者は加齢に伴って、発汗機能と皮脂分泌が徐々に低下するため、皮膚は乾燥しやすくなります。
特に乾燥しやすいのは、もともと皮脂の分泌が少ない脛(すね)、膝、ひじ、足の裏などの部位です。顔では頬や目、口のまわりなどが乾燥しやすくなります。
乾燥肌の原因については前回のブログ「どうして子供は乾燥肌になりやすいの?原因と対策について」にも載せていますので、ご参照ください。
イラスト:第一三共ヘルスケア くすりと健康の情報局 より
保湿剤の種類と働き
保湿薬の機能には、おおまかに以下の3つに分けられます。
①保護作用・・・皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、外界からの異物の侵入を防ぐ
②加湿作用・・・水との親和性の高い吸湿物質を塗ることで角層に水分を保つ
③皮膚を円滑にする作用
保護剤
保護物質を塗布することによって皮膚表面に膜を作り、皮膚から水分が蒸散することを防ぎます。
代表的な保護剤はワセリン、ラノリン、天然/合成セラミド、コレステロール、ミネラルオイル、オリーブ油、馬油、椿油、シリコンなどがあります。
加湿剤
加湿剤は水になじみやすい物質です。吸湿物質を塗布した角層に水分が吸着され、水分量が増加します。
代表的な加湿剤はヘパリン類似物質、尿素、グリセリン、αヒドロキシ酸、ヒアルロン酸、ソルビトールなどがあります。
円滑化(軟化)剤
剝がれた角化細胞の隙間や皮膚表面の凹凸を埋め、皮膚表面を滑らかにします。皮膚や皮脂に含まれる天然脂質と生物学的に同等のものです。
代表的な円滑化剤はコラーゲン、コロイダル、オートミール、エラスチン、ステアリン酸グリセリル、イソプロピルパルミテート、シアバターなどがあります。
保湿・保護を目的とした主なスキンケア剤
一般名 | 代表的な製品名 | |
皮膚の保湿を主としたもの | ヘパリン類似物質含有製剤 | ヒルドイドクリーム、ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドローション、ヒルドイドフォーム |
尿素製剤 | ケラチナミンコーワクリーム、パスタロンソフト軟膏、パスタロンクリーム、パスタロンローション、ウレパールクリーム、ウレパールローション | |
皮膚の保護を主としたもの | 白色ワセリン | 白色ワセリン、サンホワイト、プロペト |
亜鉛華軟膏 | 亜鉛華軟膏、亜鉛華単軟膏 | |
その他 | アズノール軟膏 |
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)の特徴
医療機関で良く処方される保湿薬にヒルドイドがあります。ヒルドイドはヘパリン類似物質という成分を含み、高い保湿作用を有し、血行を促進することで、皮脂欠乏症、進行性指掌角皮症等に有用とされています。
以下の4製剤があり、季節や使用部位によって使い分けることが出来ます。
①軟膏
皮膚保護作用、皮膚柔軟作用があり、皮膚刺激性が低いため、皮膚の状態を問わずに使用できます。ただし、べたつくため、洗い流しにくいことが難点。
②クリーム
軟膏よりもさらっとしていて、よく延びる
③ローション
化粧水のような感じで使用感が良く、広範囲に塗れる
④フォーム
泡で出てきて延びやすく、広い範囲に素早く塗れる
こんな使い分けも♪
・暑い夏はさらっとしたクリームやローション、乾燥する冬は軟膏など使用感に応じて
・朝はサッと塗れる延びの良いものを使用し、夜にはしっかりと保湿
素早く
肌を洗って清潔にしてから保湿剤を塗ると良いでしょう。
濡れたまま放っておくと、乾燥がどんどん進んでしまうので、水分を良く拭き取って、5-10分以内に保湿剤を塗りましょう。
こまめに
濡れた後など、とれてしまった場合はこまめに塗りなおしましょう。
最低でもお風呂上りと朝の2回は塗りましょう。
※医師の指示がある場合は、その回数を守って使用してください。
FTU フィンガーチップユニット
薬の効果をしっかり得るために塗る分量の目安
FTU(Finger Tip Unitフィンガーチップユニット)は元々ステロイド外用剤を塗布する際、十分な効果が得られるように考えられた使用量の目安です。
大人の人差し指の先から第一関節まで薬を乗せた量で、チューブタイプ(口径が5mm程度)の軟膏やクリームでは、1FTU=約0.5gに相当します。
※どのチューブでも1FTUが約0.5gになるわけではない点には注意が必要です。口径の小さい5gチューブでは0.2g程度、10gチューブでは0.3g程度となり、1FTU=約0.5gになるのは25~50gチューブの場合です。
1FTU(約0.5g)は、大人の手のひら2枚分の面積(体表面積の約2%)に塗るのに適した分量の目安。塗る量が少し多いと感じるかもしれませんが、十分な量をしっかり塗ることで、期待する効果が得られやすくなります。
ローションタイプの場合は1円玉大が1FTUの目安です
その他のメジャーな保湿剤について少しご紹介します
その他の保湿剤
ワセリン
ワセリンは保護剤に分類され、他の軟膏のベースにもなります。
刺激が少なく、どのような肌タイプにも使えますが、ベタベタとするので、使用感が好きでない方もいるかもしれません。
古くから使われていて安全性が高く、赤ちゃんや敏感肌の方にも使いやすいです。
精製度によって名称が変わります。精製度が上がると値段も上がる傾向にあります。
抗炎症作用や殺菌作用などはなく、保湿保護目的で用いられます。
★白色ワセリン
ワセリンと言えば通常、白色ワセリンのことを指します。安価で使いやすいです。
★プロぺト
白色ワセリンの純度を高めたもの(不純物が少ない)。白色ワセリンで刺激を感じる方にオススメ。
★サンホワイト
プロペトよりもさらに純度を高めたもの(不純物が少ない)。保険適応はないので、自費で購入することになります。
尿素製剤
パスタロン、ケラチナミン、ウレパール
尿素は肌に含まれている天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)を構成する成分のひとつ。
尿素製剤は肌の表面の角層に水分を保持し、硬くなった角質を軟らかくします。
高い濃度(一般に10%以上)で角質を溶解する作用が発揮されるとされています。
医療用の尿素製剤は10%以上であり、「魚鱗癬、老人性乾皮症、アトピー皮膚、進行性指掌角皮症(主婦湿疹の乾燥型)、足蹠部皸裂性皮膚炎、掌蹠角化症、毛孔性苔癬」に用いられます。
粘膜や傷口への使用は避けることとされています。炎症を起こしたり、肌が過敏になっている場合には刺激を感じることがあります。
かかとやひじなど角質が厚くなりガサガサしたところへの使用が適しています。
ユベラ軟膏
血行を促進するビタミンEと角化調節作用のあるビタミンAを含みます。
(※15℃以下で保存)
皮膚の血液の流れを増やし、皮膚を保護することにより、しもやけやカサカサした皮膚を改善します。
気になることがあれば、薬局の窓口までお気軽にご相談ください。
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